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美談とデマ
2013年04月13日 (土) 22:23 | 編集
 
去る4月8日に Facebook に書き込まれた「有名人にまつわるいい話~心が動いたらシェア~」の志村けんとビートたけしの美談が泣ける話だとしてシェアにシェアが重ねられ、一気にネット上に広まり話題となりました。

「いいね!」ボタンが13万回以上押されるほど称賛を浴びた美談なわけですが、概要は以下の通り。

ビートたけしが86年、フライデー襲撃事件で芸能界を干された時に、たけしの家族、たけし軍団、軍団の家族まで、生活を工面していたのは志村だった。たけしは自著で、「おそらく、出費は3億円はくだらない」と明かしている。出所後、お礼を言ったたけしに、志村はこう返した。「俺が勝手にやったこと。それより、今まで通り、どっちがお客さんを笑わせるか、ライバルでいてくれよ」

しかしその後、オフィス北野など関係者が、この美談が「事実無根の捏造記事」であることを明かし、デマであることが判りました。


この「作られた美談」を読んで、おいらの脳裏を過ったのは「一杯のかけそば」です。
若い世代は御存じないかもしれませんが、「一杯のかけそば」とは、1989年に「涙なしでは聞けない」美談として日本中を席巻し、社会現象にまでなった童話というか小説です。
テレビで連日取り上げられたのはもちろんのこと、国会の予算委員会で質問に立った議員がほぼ全文を朗読したことからも、まさに社会現象であったということが解ります。

「一杯のかけそば」は、そもそもが小説(童話)なんですけど、何故か「実話であるか、創作であるか」ということが話題になって広がり、これまた何故か「実話説」が優勢になって大ブームを牽引してゆきました。
きっと世の中の心の綺麗な人々の「こんなに感動して泣ける話なんだから、実話であって欲しい!」という思いが連鎖して、日本中を巻込む騒ぎになったのだと思いますが、当時のタモリはこの騒ぎを「涙のファシズム」と評しています。

そして、ブームが最高潮に達した頃に作者自身がインタビューを受けた際、「はい、実話です」みたいなことを言ってしまった、、、もちろん嘘ですから、後にペテン師の烙印が押されるわけです。

そういう意味で、今回の「志村&たけしの美談」というデマに対して、関係者が早期に否定のコメントを出したことは大いに理解出来ます。否定のタイミングを逃した場合、そのダメージは計り知れませんから。


で、昨今おいらが問題だと思うのは「感動できればデマでも良い」と思っている日本国民が予想以上に多いということです。
いわゆる「事実ではないのかもしれませんが、いい話であることには変わりないのでシェアします」と言う人達ですね。
ネット上の言葉遣いをすれば「デマであろうと、いい話だからシェアする。おまえらも感動しろ」といったところでしょうか。
これって、大いに危険なことだと思います。

1975年に文藝春秋に掲載された「日本の自殺」という論文があるのですが、この内容が、まさに今のこの状況を予言しているかのようなのです。

論文の内容的には「豊かな時代を過ごしているうちに、国民の思考力や判断力が衰弱して衆愚化し、最後には文明が滅びてしまった過去の多くの例から、現代日本という文明も自ら滅びる道を進んでいるということを警告」しているわけですが、人々が衆愚になっていく大きな原因の一つとして指摘されているのが「情報の洪水と汚染」です。
膨大な情報が垂れ流されることで、直接経験によらない間接経験の情報の比率が増え、情報に対する判断や批判が行われなくなり、浅薄な好奇心をあおりやすい一時性の情報ばかりを簡単に消費するようになり、やがて情報を無批判に受け容れるようになる、というプロセスです。

チープな「感動」を感情の赴くままに「シェア」して、衆愚自身が「無自覚」にデマを広げるメディアの一部になってしまっているわけです。この「無自覚」というのは本当にタチが悪いのだ、ということは「カルト宗教の信者達」を見ていればお解りいただけるかと思います。
しかもこの落とし穴には「心の綺麗な人」ほど嵌まりやすいというのも、またタチの悪いところです。

そして、このような中長期的な危惧だけでなく、大規模災害などの情報錯綜時におけるデマの根源になることにも注意しなければいけません。
以前の我々の「デマ」という言葉の認識には「悪意を持った人や非常に軽率な人が流すもの」というイメージがありましたが、どうやらそうではないようです。
「デマ」とは、心の綺麗な人が「困っている人を助けたい」と思って善意で発信した情報が、やはり心の綺麗な人々を廻り廻って結果的に「デマ」になるということが多いのです。
多くの善意による大量の「誤った情報」は、救援省庁への間違った問い合わせの殺到になり、スムーズな救援活動を阻害します。
実際に東日本大震災の時の誤った情報拡散の事例が「こちら」です。

以前であれば、「大規模災害時にはデマが発生しやすいので、テレビやラジオから正しい情報を得て行動しましょう」というのが言わば常識として定着していました。
しかし昨今、テレビやラジオの情報は必ずしも正しくないことが露呈しつつあります。特に東日本大震災時の原発事故を機に、その信用度は地に墜ちました。
実際に帰宅難民になった人達が「twitter や Facebook からの情報がなかったら、もっと大変なことになっていた」という事例も数多くあります。

日本国民の皆様には是非、一見良さそうに思われる情報を「思考停止状態でシェア」することなく、熟考の上で慎重にシェアもしくは拡散していただきたいと切に願う次第であります。



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