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EBMの功罪
2006年10月18日 (水) 09:37 | 編集
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今日の午前中、8日に受診した泌尿器科に検査結果を受け取りに行ってきました。

で、その検査結果と菓子折り(鳩サブレーです)を持ってセカンドオピニオンでお世話になった広本先生の元へ。
先生は検査結果について詳しく説明して下さいました。

ちなみに先週水曜日に広本先生に処方してもらったクラビット(抗菌剤)が効いたらしく、睾丸の痛みの方もほぼ消失(まだ多少の違和感はありますが)しました。

悪性腫瘍(精巣癌)に関しては昨日御報告した通り、陰性です。
クラミジアももちろん陰性。

尿からは菌が検出されておりまして、これが腸内細菌なのですが、クラビットが有効な菌だそうです。
まさにドンピシャ。
診断名は精巣上体炎だそうです。

それにしても今回の一連の騒動?の発端は去る8日に受診した1軒目の泌尿器科でありました。
このクリニック、 「主観的経験や伝聞に基づく医療(漢方など)を排除し、米国型の証明医療(EBM : Evidence Based Medicine)を実践しています。不愉快な検査は極力行いません。」
、、、ということが売り。

ちなみに、ここを受診した時に受けた問診は、、、
「睾丸痛が1回だけなのかそうでないのか、それはいつ頃からか、、、」
それだけ。
視診、触診は一切無し。

で、、、
「悪性腫瘍の初発症状の疑いあり、稀にクラミジア感染の可能性もあり」
それで血液検査と尿検査です。
その他の説明は無し。
オイラ、これで不安が増幅してしまったわけです。

「精巣癌?、、、だとしたらタチの悪い癌じゃん、、、まずいな」、、、って思いました。

今日、検査結果が出てハッキリしたことですが、精巣癌の腫瘍マーカーの検査をしていたので、やはりその医師は精巣癌を疑っておられたということになります。
この精巣癌という癌は進行が非常に早く、転移もしやすい癌です。
きっと「見落としたら取り返しのつかないものを先ず調べる」という事なのだと思います。

クラミジアは他のヒトに感染させる可能性がありますから、これも結構シャレにならない、、、
患者本人が「不特定多数との性交渉なんて有り得ない」と言っても実際は性交渉をしていることはよくあるそうですから、、、。

そして、その他の可能性のある泌尿器系の病気は経過観察ということで、様子を見ていても特に大事には至らない、、、ということなのでしょう。

たしかに、この手法は医学的にも理にかなっていて間違いではないようです。

説明がなかったのも、言い方を変えれば「余計なことは言わない」となるのかもしれません。
検査結果が客観的数値として出るまでは主観的経験的診断はしない、、、ということでしょう。

視診、触診が一切なかったのも「不愉快な検査は極力行わない」ということと、視診触診からの「主観的な診断や経験則による判断を排除する」という米国型医療の実践なのでしょう。

検査結果が出る前に「これは精巣上体炎でしょう」と主観的経験で喋ってしまって、もし悪性だったら「あのとき悪性じゃないと言ったじゃないか」とクレームをつける患者がいるかもしれないから、「クレーム対策」といった側面もあるでしょう。
医療訴訟が当たり前の米国的な考え方です。

しかし、、、しか~し、、、

開口一番「悪性腫瘍の疑い」と言われて、他の説明は「稀にクラミジアの可能性」だけ。
しかも結果が判るのは10日後、、、
その間の患者の気持ちはどうでしょう?。

自分の睾丸なんて普段から注意深く触っているわけじゃないから、急に気にして触って調べたところで硬さもしこりもよくわからないですから。
やはり、今までそれはそれは沢山の睾丸を触ってきたであろう「経験豊富な専門医」に実際に触ってもらってその経験に基づいた見解や予測を知りたいのです。

肛門から指を入れて直腸内から前立腺を触診する方法、、、
「前立腺にも問題はないでしょう、、、」これなど完全に経験則ですが、熟練した専門医なら80%の確度で診断可能だそうです。
80%というのは高確率なのか?、それとも20%もの確率で誤診があるとみるのか?。
米国型医療では後者なのでしょうね。

思うんですけど、、、主観的経験則、大いに結構じゃないですか。
今回のクラビットの処方なんて典型的な経験則です。
それでもし検査結果が悪かったとしても「先生、あの時はこう言ったじゃないか」なんて僕は言いませんって、、、。

下半身の視診や触診にしたって、恥ずかしいと言えば恥ずかしいけど、「悪性腫瘍の疑い」とだけ言われて帰された後の心の重圧にくらべれば屁でもないですわ。
不愉快でも何でもないです。

誤解のないように言っておきますが、僕はEBMを否定しているのではありません。
全ての医療において、EBMが尊重されるべきであることに異論は全くありません。
主観的経験「だけ」で診断をすることは危険、、、全くもってその通りです。
そして経験の少ない臨床医にとってEBMは本当に有難いものだということも理解しています。

しかし、EBMに偏重するあまり経験則を一切排除する、というのはどうかと思うのです。
医師が一言「これは私個人の経験による見解ですが、、、」と付け加えれば良いではないですか。
そして「可能性は低いと思いますが、念のため悪性腫瘍の検査もしておきましょう、、、」
これで良いではないですか。

論文に無ければ非科学的という考え方、、、これはいかにもアメリカ的発想です。
「論文に基づいて診断した」のであれば、訴訟を起こされた時にも盤石でしょう。
逆にEBMに基づいてないことを少しでも喋ると訴訟の時に不利、、、。
嗚呼、まさに米国の毒。

米国の後追いで、日本もこれから医療訴訟が増えるでしょう。
医師は自分の経験に基づいた説明をすればするほど訴訟で不利になる、、、
なんだかなぁ、、、日本の医療がどんどん冷淡になっていく。

医師と患者が膝と膝をつき合わせて会話を交わす、、、日本にはこれが必要だと思うんだけど。
EBMもいいけど10日間も不安に苛まれて暮らす患者の気持ちも考えてよ、、、。

いずれにせよ、今回のことで広本先生には本当にお世話になりました。

また、多くの皆様から祝メールをいただきました。
本当にありがとうございました。

そして皆様には心配をおかけして本当にすみませんでした。
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